2022年4月、虹のコンキスタドール(虹コン)は念願の日本武道館公演を成功させ、ひとつの大きな節目を迎えました。この公演をもって、リーダーの的場華鈴さんと中心メンバーの一人だった根本凪さんが卒業し、グループは新たなフェーズへと突入します。
そして2か月後の6月、虹コンは「全国美味いもの征服ツアー2022」と銘打った全国ツアーをスタート。これは2020年にコロナ禍で中止となった全国ツアーのリベンジともいえるツアーで、改めて現場でのライブを追い求めるスタイルを貫くものでした。
この武道館公演以降の虹コンの歩みは、単なる次のステージというより、コロナ禍という特殊な時代を経た「再構築」のストーリーでもあります。本記事では、そこにあった変化と挑戦、そして葛藤について振り返ります。
的場華鈴の復活と、新たな予科生(原田珠々華、尾林結花、石浜芽衣)の登場
「全国美味いもの征服ツアー2022」の初日(2022年6月4日)、東京・なかのZEROホール。ファンに衝撃が走りました。卒業したはずの的場華鈴さんが、なんと「予科生」として復帰したのです。
彼女の口から語られたのは、「もう一度、虹コンの太陽になりたい」という強い意志でした。
2022年12月に日本武道館公演を発表してから公演までの数か月、虹コンメンバーたちが自主的に課題に取り組み、成長していく姿に的場さんは感銘を受けました。そして卒業発表時にコメントした「虹コンですべてやり切った」という思いから、「虹コンにはまだまだ可能性がある」へと頭が切り替わったのだと思います。
その想いは、後輩たちを導く“予科生リーダー”という新たな役割に繋がっていきました。
同時期に加入した予科生たち(原田珠々華、尾林結花、石浜芽衣)も注目です。彼女たちは虹コン武道館公演を観て「自分もあの舞台に立ちたい」という夢を抱いた仲間たち。つまり、虹コンの最高到達点に感動して入ってきたメンバーたちです。その初期衝動はとても強く、後の活躍にも繋がっていきます。
虹コン予科生のチャレンジ精神とそれを支えた的場華鈴
この時期の予科生たちは、とにかくチャレンジ精神にあふれていました。虹コンの本科生とは別に、予科生4人だけで「全国美味いもの征服ツアー2022」(全12公演)の前に単独ライブを開催。
4人という少人数で、10人以上で行う虹コンの楽曲をパフォーマンスすることになるので、歌割やダンスの再構築だけでも相当大変だったはずです。それを乗り越えて、観る人を惹きつけるライブを成立させました。
またツアーで全国を回りながらも、@JAM PARTYやIDOL OF THE YEAR2022など、多くの対バンイベントにも出演。中でも石浜さんは、過去にアイドルの経験がないにもかかわらず必死でついていき、IDOL OF THE YEAR2022では、決勝の舞台(場所:日本青年館ホール)で必死でパフォーマンスをする姿が印象的でした(ちなみに虹コン予科生は決勝で最下位となったのですが、的場さんだけは最後の最後まで「私たちが最下位のわけがない!」という感じで悔しそうでした(笑))。
個性的な予科生(川端優、栗原舞優、澤村光彩)の加入
また虹コンは2022年12月に川端優さん、2023年2月には栗原舞優さん、澤村光彩(さわむらきらり)さんが虹コン予科生として加入しました。
川端優さんは、もともとが虹コンのファンであり、虹コンの日本武道館公演を純粋にファンの1人として観ていました。推しは虹コンメンバーの鶴見萌さんであり、「きれいなお姉さんが大好き」というオタク気質満載の子。
虹コンのコンセプトである「自分たちが思う「かわいい!」や「好き!」を追い求めるインドア系・正統派アイドルグループ」を体現するような子でした。
ただし、加入当時は中学3年生であり、アイドルに必要となる歌やダンスの経験はほとんどないというところがネックで、川端さんが本科生に昇格するまでに約1年8ヶ月かかり、虹コン史上もっとも遅い昇格となったのでした。
栗原舞優さんは、もともとリルネードというアイドルグループで、活躍をしていたメンバー。
ですが、元虹コンメンバーの根本凪さんをリスペクトする気持ちは大きく、自称「根本凪オタク」であり、虹コンの「自分の好きを追い求める」というコンセプトには非常に合致した人物。ちなみにアイドル経験は長く、予科生になってからは虹コンの歌やダンスをハイスピードで覚えていきました。
【参考】栗原舞優さんがリルネード時代、虹コンの日本武道館公演を観た後の感想↓
最後の澤村光彩(さわむらきらり)さんも、過去にアイドルグループを経験しておりましたが、特にTikTokでの活躍が素晴らしく、虹コン予科生になった2023年2月時点ですでにTikTokのフォロワーが25万人を超えていました。虹コンの運営としては、TikTokでの影響力というものも考慮に入れて澤村さんの加入を決めたところもあると思われます。
声出し解禁とファン層の変化 ー 日比谷野音ライブで見えたこと
2022年12月、日比谷野外音楽堂で虹コンのライブが開催されました。マスク着用のもとではありますが、屋外ということもあり、ついにファンの「声出し」が解禁されたのです。
ただ、コロナ禍前には当たり前だった「コール文化」が一気に復活すると思いきや、そこには微妙な空気が生まれていました。
かつての虹コン現場では、ほとんどがガチのオタクで、「アイドルを鼓舞するように」または「自分が目立つように」、強烈なコールが会場を盛り上げていました。
しかしこのライブでは声出し解禁にもかかわらず、ファンはどこかぎこちなく、コールの声もまばらに感じました。
私自身も声を出しましたが、周りで声を出している人がまばらであり、自分の声が会場で目立ってしまう感覚があり、声を出すのが少し恥ずかしいと感じたのです。
それもそのはず。2020年からのコロナ禍の約3年間で確実に増えたのが女性ファンの存在。テレビやSNSを通じて虹コンの存在を知り、深い共感を覚えた女性たちがライブに来て、静かに推しを目で追うという“新しい応援スタイル”を持ち込んだのです。そもそも女性に限らず、コロナ禍以降に虹コンのファンになった人たちはそもそもコールを知りませんでした。
正直、コロナ禍より前のライブは、ファンでぎゅうぎゅう詰めになったり、ガチなオタクが声を張り上げたり激しい動きをするのは、男の私でも少し耐え難いところがありました。それがコロナ禍になり、強制的にライブが静かになったことにより、特に女性ファンにとってアイドルのライブが観やすく快適な場所になったのは間違いありません。
声出し禁止の期間が約3年続き、声出し解禁になった結果、虹コンのライブはガチなオタクがコールを飛ばすだけの場ではなく、様々なファンの視点と感情が交差する多様な空間になっていたのです。
【参考】2022年12月 日比谷野外音楽堂でのライブはこちら(この曲のコールは良かったです!)↓
虹コンのチーム体制強化 ー 結成9周年ライブと予科生から本科生への昇格
2023年2月からは「全国美味いもの征服ツアー2023~おかわり編~」の全国ツアーがスタート。このツアーは虹コンが2チーム(予科生全員を含むチームとそれ以外のチーム)に分かれてツアーを行いました。
これは、2つのチームに分けることで、普段とは違うパフォーマンス(歌割、ダンス、フォーメーション)を実施することになり、虹コンメンバーが個々にレベルアップをする目的があったと思われます(特に2022年12月~2023年2月から加わった3人の新予科生たちはほぼ0からのスタートだったためこのツアーは大変だったはず。。。)。
なお、2023年に入ってからはほとんどのライブでファンの声出しが解禁され、コロナ禍前のライブスタイルに戻りつつありました。しかし、観客全体が一丸となってつくる熱狂的な一体感は、簡単には戻りませんでした。かつての盛り上がりを知っている私にとっては、ライブ中の静けさを少し寂しく感じたものです。
ちなみに、予科生7人のいるチームはこのツアーで大きくレベルアップしました。新予科生たちはまだ経験が浅く、パフォーマンスにばらつきがある一方で、今までの虹コンには無かった強い個性も感じたため「これからの虹コン」を体現するのを予感させる存在でした。
そして2023年7月、虹コン結成9周年ライブで5人の予科生(的場華鈴、原田珠々華、尾林結花、石浜芽衣、栗原舞優)が本科生へ昇格。しかし、この時期から「虹コン全体の成長スピードは鈍化してきたのではないか」と感じ始めました。
その理由として、虹コンメンバー個人のレベルは上がってきているものの、「日本武道館公演後の明確な目標がないこと」や、「新規ファンを取り込むための戦略が見えにくくなっていたこと」が挙げられます。
なお虹コンは日本武道館以降も集客できたため、2023年の秋ツアー以降では比較的大きく座席指定のある会場でライブを行いました。このため、普段コールをするファンの席はバラバラの位置になり、その結果会場のファンの声援が一体感をもって盛り上がることはありませんでした。
ただ、2023年の虹コンにとって、唯一最高に盛り上がったライブ現場がありました!それは、真夏のTIF2023でのライブで、特に最後のHOT STAGEは圧巻でした。
きっと夏の暑さなど気にしない生粋のアイドルオタクが集まったのでしょう。虹コンは夏らしさを全開にしてパフォーマンスを行い、ファンのコールの熱量は虹コンに呼応するように非常に高くなり、最高に盛り上がったのでした!
私は「この熱量こそ、今の虹コンには必要なんだ!!」と感じたものです。
SNS(TikTok)アイドルの急成長と、虹コン人気TikToker(山崎夏菜、澤村光彩)の卒業・脱退
コロナ禍により、アイドル界隈ではライブが制限されたため、それに代わってSNSでのショート動画やライブ配信がファンとのつながりを持つうえで重要になり、SNS戦略がアイドルにとって欠かせないものとなりました。
SNSの中でも、コロナ禍において非常に強い拡散力(新規にリーチしやすく、フォロワーが増えてファン化まで可能)を発揮したのがTikTokです。
例えば、2025年6月時点で非常に人気の高いアイドルグループであるFRUITS ZIPPER(フルーツジッパー)さんは、デビューは2022年4月ですが、デビューした4月に発表した「わたしの一番かわいいところ」がTikTokでの再生回数が28億回を超えるなど、アイドルオタクだけでなく、一気にいろんなファン層から認知されることになりました。
今はテレビに出ている存在ですが、TikTokの拡散力の影響がテレビに影響を及ぼした例の一つだと思います。
また、TikTokを使用する年齢層に影響されていると思われますが、FRUITS ZIPPERさんのファン層は若い世代が多く、女性やカップルが多いのも特徴になります。
ちなみに虹コンは、SNSではX(旧twitter)をメインにファンを増やしてきたグループです。ですが、虹コンがファンに認知された大きな要因は、ライブでの熱量が大きさだと思われます。
例えばCDのリリースイベント(通称リリイベ)などのライブ現場で面白い企画(お絵描き、ランドセルを担いでライブなど)をやって盛り上がったり、フェスなどの対バンで熱量の高いライブを実施することで、コツコツとファンを増やしていきました。
ですが、コロナ禍に入るとファンとの熱量を上げるようなライブができなくなり、BSでの冠番組「虹のコンキスタドールが本気出しました!?」(通称虹マジ)が終了してしまうと、虹コンの集客力は弱くなってきたと考えられます。
なおコロナ禍以前はタワーレコードのイベントスペースでリリイベを毎日行っていた時期もありましたが、すでにそのような場所でリリイベを行えるほど、虹コンは小さいグループではなくなっていました。
ちなみに虹コンには、TikTokで非常に人気の高いメンバーはいました。
虹コン予科生だった澤村光彩(さわむらきらり)さんと山崎夏菜(読み:やまさきなな、TikTok名義:ちゃんちゃんまる)さんです。
澤村さんは虹コン加入時の2023年2月ですでに25万人のTikTokのフォロワーがいたことは書きましたが、虹コン加入後もフォロワーを増やし続け、2023年末には50万人に達していました。
山崎さんに関しては、TikTokを始めたのが2023年3月頃でしたが、TikTokでのショート動画のバズり方は凄まじく2023年末には25万人のフォロワーを獲得していました。
虹コンにはTikTokの公式アカウントがあるのですが、この人気の2人が虹コンのTikTok公式アカウントに登場すると、従来の虹コンの人気メンバーを追い越して、バズるようになりました。
虹コンの運営としては、この2人のTikTok人気メンバーを抜擢して、TikTokの拡散力を使った戦略を使うこともできたはずですが、虹コンはチームとしてのライブを優先したんだと思います。
最終的には、澤村さんと山崎さんはTikTokerとして自分を活かせる道を選択し、虹コンから離れることとなりました(山崎さんは2024年1月に卒業、澤村さんは2024年3月に虹コン予科生を脱退、2025年6月時点で二人ともUniiiqueに所属)
まとめ:虹コンは次の時代へとどう歩むのか?
日本武道館という頂点を越えて、虹コンはチームの体制を整えるべく変化をしていました。的場華鈴さんの復活と新たな予科生の登場、声出し文化の再構築、女性ファンの増加、SNSから生まれた新しい形のアイドル像——。それぞれは、コロナ禍という特殊な時間を経たからこその“虹コンらしさ”を含む変化だったといえるでしょう。
そして、虹コンは「次の目標」を見出すタイミングに差しかかっていました。2024年の虹コン10周年に向けて、もう一度「虹コンってなんだ?」という問いに、ファンもメンバーも向き合う時が来ていたのかもしれません。

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